毒親による過剰な自己投影とは?自分の子どもにやってしまったら?

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毒親

毒親を生み出してしまう主な原因は、過剰な自己投影だといわれています。親による自己投影で厄介なのは、本人はそのことに対して無自覚であるということです。そして、毒親による過剰な自己投影を受けて育てられた人は、自分の子どもにも自己投影をしてしまう傾向にあります。そこで今回は、そもそも自己投影とは何かを知り、わが子に対して自己投影してしまう場合の対処法などについて解説します。

目次

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そもそも「自己投影」とはどういう意味?

毒親に育てられた自分が、わが子にも毒を振り撒いてしまいそうなら、まずは毒が作られてしまう過程を知る必要があります。毒親が侵される毒の原因は、主に自己投影です。ここでいわれる「自己投影」とは、自分自身の欲求や感情を、無意識に他者のものと思い込んでしまうという心理学上の概念です。

たとえば、自分が相手を嫌っていると、その相手も自分を嫌っていると思い込んでしまうことがあります。この状態を自己投影といいます。また、好きな人がいると、その人の何気ない仕草から自分への愛着を探し、相手もまた自分のことを好きなのに違いないと錯覚してしまうような場合も自己投影の典型です。

もちろん、この程度の自己投影は人間にとってありがちな心の働きに過ぎません。好きな人が自分のことを好きでいてくれたらいいと思うあまり、自己投影をしてしまって恥ずかしい勘違いをしていたという人もいるのではないでしょうか。しかし、自己投影というものは、その程度が過剰になると、人間関係に深刻な悪影響をもたらしてしまう場合があります。

たとえば、自分が無意識に抱いている劣等感や抑圧を、相手のものだと思い込み、しかも思い込んでいるだけでは済ますことができず、それを相手のせいにしてぶつけてしまうといったようなケースです。自己と他者の境界が不明確になり、自分の感情を他人に押し付けてしまうなど、自分自身の人格を見失ってしまうこともあるだけに、過剰な自己投影は心理学的にも危険な兆候と見なされているのです。

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「子どもへの自己投影をする」はなぜ起こる?

親は子どもに対して自分の理想を反映する傾向にあるとされます。たとえば、「自分は大学に行けなかったから、子どもには有名な大学に入ってほしい」「自分はスポーツ選手になりたかったから、子どもには早期から英才教育を施して一流の選手にしたい」といったケースは、親子間の教育における自己投影の典型です。

特に、「自分の親にはこうして育ててほしかった」という恨みのような気持ちが残っている場合、子どもに対する自己投影が過剰になってしまうことがあります。子どもの人生を通して、自分ができなかったことを叶えようとする気持ちが強いため、必要以上に自分の理想を押し付けて、それに沿った教育をしてしまうのです。

とりわけ、同性の子どもへは自己投影をしやすい傾向があります。これは自分と似た境遇の人ほど自己投影しやすいためで、逆に異性の子どもの場合は、理想の異性像を押し付けるような形で自己投影してしまうことが多いようです。そして、悪いことに自己投影をしている親のほとんどは無自覚です。それを子どものためと信じて疑っていないので、自分の願望を押し付けているだけだということに気付くことができず、間違った教育を続けてしまっている点にこの問題の根深さがあります。

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子どもへの自己投影はなぜいけないのか?

親の自己投影は、子どもの発育にさまざまな悪影響を及ぼすといわれています。ここでは、子どもへの自己投影がなぜいけないのか、その危険性について詳しく解説します。

親や他人の顔色をうかがい自分の意思で行動できなくなる

親による過剰な自己投影の中で育てられた子どもは、何より親の顔色を第一に考えて行動するように育ってしまいます。親が喜ぶことこそ自分の価値観だと思うようになり、自分に嘘をついてでも親に褒められようとしたり、自分の感情を押し殺しながら親の機嫌を取ろうとしたりなど、とにかく親に愛されようと必死になります。そのように育った子どもは、まず主体性を持つことができなくなるでしょう。

主体性が欠如すれば、自分で考えて行動できなくなったり、自分の気持ちをうまく表現できなくなったりする可能性があります。親のいうことだけが正しいこととなってしまうので、自分のやりたいことや好きなことが分からなくなってしまうのです。社会に出ても、他人の評価が気になって自分の意思で行動できないなど、さまざまな弊害を抱える恐れがあります。

親離れ・子離れができなくなる

本来、子育てとは、子どもが一人でも生きていけるように自立させることがゴールだとされます。しかし、過剰な自己投影による子育ては、むしろ自立とは逆の現象が起こりがちです。つまり、子どもがいつまでも親元を離れることができず、親も子どもを常に手元から離さないような共依存の関係に陥ってしまうことが多いのです。

親の自己投影が横行する家庭では、親が子どもに過度に干渉し、自分の目の届くところに置きたがるようになる傾向があります。子どもは自立しようとしているにもかかわらず、泣きついて同情し、自分のもとに繋ぎとめ、大人になってもずっということを聞かせようとするケースも珍しくありません。

子どものほうでも、親のいうことは絶対として育てられているため、自立したくても親を捨てるようなことはできません。その結果、親も子もお互いに親離れ・子離れができない状態となり、共依存の関係に陥ってしまうのです。親の自己投影が強い家庭では、大人になっても関係は変わらず、就職や結婚などにも親の意見を優先するような状態になります。しかし、親子がいつまでも依存関係にあるのは健全とはいえません。

対人関係で問題を抱えやすくなる

自己投影が過剰な親の元で育つと、親子関係だけではなく、対人関係にも問題を抱えやすくなります。自分の意思にしたがって行動する機会が少ない子どもは、自分に自信が持てなくなり、自己肯定感も低くなりがちです。その結果、他人の顔色をうかがい過ぎたり、自分と他人を比べて自己嫌悪に陥ったりなど、人間関係を上手に構築できなくなってしまう可能性があります。

他人の顔色ばかり気にして、相手に好かれようと必死になり過ぎてしまうのも問題です。もし、好かれようとしている相手が、自分のことを全く顧みない友達や恋人だったら、普通なら諦めて関係を自ら断ち切るでしょう。しかし、他人の顔色を優先する人は、自分を大切にしてくれない相手とも関係を続けてしまいます。これも、親の過剰な自己投影によって生じてしまった人格の歪みと見ることができます。

また、「自分が貧しかったから、子どもには同じ思いをさせたくない」といって、子どもを過度に甘やかして育てることも一種の自己投影です。そのようにして育てられた子どもは、人よりわがままに成長しやすく、やはり対人関係で問題を抱えやすくなってしまうでしょう。

ストレスを溜めがちになる

「将来は世界的な名医に」「成績は一番であるべき」など、自分が果たせなかった夢が大きいほど、子どもにも過度な期待をかけてしまうものです。そうした過剰な期待をかけられた子どもは、その期待に応えようと必死に頑張ります。しかし、親の期待は過剰な期待であり、子どもがいくら頑張っても、その頑張りを認めてもらえる機会はほとんどありません。その結果、常にストレスを溜めがちになり、精神的に問題を抱えた子どもに育ってしまう恐れがあります。

子ども時代から続く親からの期待やプレッシャーは、就職や結婚まで及ぶことも珍しくありません。実際、大人になっても続く親の過干渉によって、心を病みやすい状態になってしまうケースも多く見られます。また、過剰な期待を受けて育てられた子どもは、常に完璧を求められるため、完璧主義者になりやすいともいわれます。完璧を求めるあまり、「できないこと」があるとイライラしてしまうのも、原因を遡れば親の自己投影がその一因になっているのかもしれません。

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自己投影が子どもを追い詰める!「毒親」とは

「毒親」という言葉は、2001年に出版されたスーザン・フォワードの著作が基になっているといわれています。「毒親」に明確な定義は存在しませんが、一般的には「子どもの毒になる親のこと」として理解されています。子どもに暴力を振るうのも「毒親」ですし、アルコールの問題で家族に迷惑をかけるような親も「毒親」と定義されるでしょう。

ただ、「毒親」の一般的な認識に最も当てはまるのは、過剰な自己投影によって子どもを抑圧しているような親のことではないでしょうか。特に、過剰な自己投影の結果、子どもの心身の健康に悪影響を及ぼすような親なら、明確に「毒親」と見なして差し支えはないでしょう。そのような種類の「毒親」において厄介なのは、「毒親」は連鎖するということです。

実際、「毒親」と呼ばれる親もまた「毒親」に育てられた経験を持ち、育ちや心に大きな問題を抱えている例が多く見られます。そして、「毒親」に育てられた子どもが親になり、「自分の親のようには育てない」と心に誓って子育てをしたとしても、実際の子育てでは親と同じようなことを繰り返してしまうことが多いことも事実です。虐待を受けて育った人が自分の子どもにも虐待をしてしまう傾向があるように、「毒親」の連鎖も断ち切ることがとても難しい負の連鎖なのです。

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「子どもに自己投影してしまってるかも」と思う時とは

子育てをしていると、「子どもに自己投影をしているかも」「自分の親と同じように毒親になっているかも」と不安に思うこともあるのではないでしょうか。子育て世代にとって、そういう不安は決して珍しいものではありません。特に、自分も毒親に育てられたという自覚がある場合ならなおさらです。それでは、世の子育て世代はどういうときに自己投影の不安を感じるものなのでしょうか。

たとえば、子どもの価値観やペースを全否定するようなひどい言葉をかけてしまったときなどです。そういうひどい言葉は、もしかしたら自己投影がいわせた言葉かもしれません。また、自分自身が「こうあるべき」「こうしないとしっかりした大人になれない」というような強迫観念を押し付けてしまったときも、毒親に育てられた人が自己投影の不安を感じる瞬間だといいます。

自分の今までの行動を顧みたときに、自分が「毒親」だったことに気付く人もいます。毒親はほとんどが無自覚ですが、子どもが不登校になったり、問題行動を起こしたりしたときなどに、自らを振り返ってみて「自分の育て方に問題があった」と気が付く人もいるようです。毒親は子の世代、孫の世代まで受け継がれるといわれます。ですから、自分の世代でそうした負の連鎖を断ち切るためには、そんな風に自分の行動を顧みて、毒親のような行動をしていないかどうか反省してみることがとても大切なのです。

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子どもに自己投影をしないようにするには

子どもに自己投影してしまうのは、子どもに原因があるのではなく、自己投影してしまう自分自身に原因があります。そのため、子どもに自己投影しないためには、まず自分自身を顧みて、子どもをひとりの人間として尊重することが何より重要です。この段落では、子どもに過度な自己投影をせず、毒親にならないためにどうすれば良いかを解説します。

自分を癒す

毒親に育てられた経験を持つ人は、多かれ少なかれ心に傷を抱えているものです。自分が子どもに自己投影しないためにも、まずは毒親に育てられたことで受けた傷を癒すことから始めましょう。傷を癒すには、自分の心の中の傷と向き合う必要があります。しかし、毒親に育てられた経験を持つ人は、自分の感情や気持ちをつかめず、自分が何に傷ついたのか、どういう育て方が嫌だったのかわからないというケースも多いです。そういう場合は、自分の気持ちを紙に書き出して整理してみましょう。

ただ心に思うだけではなく、「あの時にあんなことを言われたのが辛かった」など、紙に実際に書いてみることで、自分の感情や気持ちを正しく把握できるようになります。書くことによって記憶を刺激することもできるので、自分が何を辛いと思い、何が苦しかったのかはっきりと自覚することに役立ちます。

また、毒親から植え付けられた強迫観念を手放すことも大切です。「こうしなければならない」「ああしなければならない」といった強迫観念は、ほとんど無意識的に蓄積され、自分の子どもにも自覚症状なく押し付けてしまっていることがあります。もちろん、こうした無意識的な観念を自覚するのは簡単なことではありません。ですから、どうしても子どもに自分の願望をぶつけてしまう場合は、カウンセラーの手を借りるのもひとつの手です。

子どもを別の人格として捉えて尊重する

過度な自己投影に陥らないためには、子どもとの関わり方を見直すことも大切です。子どもに過度な自己投影をしてしまうのは、そうすることによって自分を安心させたいという欲求があるからです。しかし、子育てにおいて重要なのは、自分自身の安心感ではなく、子ども自身の気持ちです。子どもに価値観を押し付けてしまいそうになったときは、まず子どもが何を考えているのか、どのように感じているのかを優先的に考えるように努めましょう。

もちろん、それでも子どもに辛く当たってしまうことはあるものです。親も完璧な人間ではないため、わかってはいても、子どもに否定的な言葉を浴びせたり、強い口調で価値観を押し付けてしまったりすることもあるでしょう。ただ、大事なのはそのあとです。自分の過ちに気付き、子どもに対して「感情的になってごめんなさい」と謝りましょう。子どもをひとりの人間として尊重していれば、「子どもだから謝る必要などない」とは思わず、誠意を込めてしっかり謝ることができるはずです。

ストレスを溜め込みすぎないよう気を付ける

子どもを健やかに育てるためには、親の心理状態や精神衛生も大きく関係してきます。子育てに対する意気込みが強いと、自分ができないことや子どもの至らない部分が目に付くようになります。その結果、強い意気込みが強迫観念に変わって、「こうでなければならない」といった価値観の押しつけにつながりかねないのです。

また、子育てに没頭しすぎ、「良い母親」や完璧な子育てを目指すと、過干渉な毒親になりやすいという傾向もあります。そうならないためにも、まず親自身がストレスを溜め込み過ぎないように気を付け、肩の力を抜いて子育てに向き合うことが大切となります。また、毒親は他人の目を気にしがちです。他人の目を気にするあまり、自分の子には完璧を求め、子どもの気持ちを無視した教育を施してしまうのです。

子育てにおいては、他人の反応に過敏になりすぎず、ゆったりと構えることを心がけましょう。大切なのは自分の子育てや子ども自身が他人からどう思われているかではありません。世間体を気にし過ぎないようにし、どうすれば子どもがのびのびと成長できるかを第一に考えましょう。

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子どもへの過剰な自己投影はNG!自分と子どもは別の人格

子どもへの過剰な自己投影は、後々の子どもの人生にさまざまな悪影響を及ぼすことになります。子どもを自立させ、自分も依存しないために、子育ては自戒の念を持って接することが大切です。もし、過去の毒親からの影響が今も心に残っているなら、まずは自分の心を癒すことから始めましょう。自分自身が毒親やストレスから解放されることで、楽な気持ちで子育てに臨めるようになるので、子どもにもきっと良い影響が出るはずです。